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『闇の精霊王はお前のことを愛していた。弟のように、大事にな。そして、俺はお前のことを愛しく思っていた。…だから、お前が忘れた記憶をわざわざ思い出す必要もないだろうと敢えて言わなかった』
「…愛しく?」
ある単語に引っかかり、聞いてしまったユーリは意味に気づいて途端に顔を赤らめた。
そんなユーリの青くなったり赤くなったり忙しなくコロコロ変わる表情にクツリと喉で笑う
『あぁ、本当にお前は可愛いなユーリ…。ずっとずっと… こうして俺の腕の中に閉じ込めたかった。今までと同じようにお前と一緒に楽しい日々を暮らしたかった』
もう一度、ユーリを閉じ込めるかのように愛おしそうに、ぎゅーっと抱きしめると一端離して、それからユーリの前髪を掻き上げるとその額にキスを落とした。
「な、な… ななな…っ///!?」
キスされた額を押さえて、赤く染めた表情で声にならない声を上げる。けども、そこに拒絶の反応はなくて、ユリウスはホッとした。
そして、
ユリウスは今までとは打って変わり真摯な瞳でユーリを見据えて言った。
『…俺はもう行かなきゃならない』
それはどこか切なげで、もう此処には戻らないことを決意したような声音で、ユーリは狼狽した。
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