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ーー…自分はユリウスに此処に閉じ込められた。
そう理解して直後に扉を挟んで向こうにいるのだろうユリウスに何度も何度も呼びかけた。
「おねが…!行かないでください!僕を此処から出して…ッ お願ぃだか、ら!ふ…ぅ、ひっく。僕を…置いて行かない…でッ!おねが…ッ ぼ、ぼくは…っ ユリウスがいなくなることを望んでな、いのに…っ!
僕の… 僕の気持ちは?僕の気持ちは… どうなるの?ふ、ぅ…ッ おねが、いユリウス… 行かないで。僕を… 此処から出し、て…ッ お…ねがぃ…ッ」
バンバン!と扉を叩く。力いっぱい、拳を握りしめて… ありったけの力を込めて殴るように扉を叩く。けれど、ユリウスが掛けた術で守られたこの部屋の扉はピクリともしない
『ーーッ すまない。ユーリ…』
扉越しに背を預けていたユリウスはユーリの嘆く声を… 引きとめる声を聞いて前髪を掻き上げて俯く。
『こんな… はずじゃ、なかったんだけどな… どこで間違えだんだろうな本当に』
そう呟く声は自嘲を含んでいて、ずるずる…っと扉を壁に座り込む
『……お前だけは必ず守るから』
壁一枚の向こうで嘆く、最初で最後の愛しい恋人の声にユリウスは意を決して怒り狂う精霊たちが集うユグドラシルの元へと向かう。その先が何を意味するか。もうーー… 自分は戻って来られないだろうと、わかってはいてもその意は決して変わらなかった。
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