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『な…ッ な、なんだこの… 力はッ!?』
ずっとずっと… 高見の見物の如く人間たちの悲鳴と逃げ惑う様子に笑っていたユグドラシルは怒り狂い暴れていた精霊たちが静かになったことに首を傾げた後に、突如感じた巨大な力の波動にハッと視線を精霊王の神殿へと向けた。
そこにいたのは…
杖を高く、頭上に掲げ内なる力を解放せんと… その絶大なる魔力の波動がぶわりと自身に纏わせたユーリが… そこにいた。
『く…ッ!どこまでも邪魔をッ』
忌々しげに顔を歪ませるユグドラシルはユーリの姿を捉えると大きく舌打ちする。けれど、すぐにユグドラシルはその表情を驚愕に染めた。
『君、まさか… その力を解放する気?』
それはまるでユーリの正気を疑うような物言いだった。
「こんなこと… 誰も望んでいなかった」
驚愕に染めるユグドラシルにユーリはポツリと呟いた。
「精霊たちの暴走も… 人間の滅びいく姿も。そしてユグドラシルの暴走も… あの人は望んでいなかった。
ユリウスは兄である貴方を… ユグドラシルを失望という闇から救いたかった。だからあの人は… 最後まで貴方への説得を試みた。精霊たちを… 止めようとした。
最後まで諦めなかった。あの人の… ユリウスの意思を継ぎたい。だから僕はーー 」
ぶわり、とまたユーリを取り巻く波動が強くなった。
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