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『や、やめ… やめろぉぉぉおお!!!』
ユグドラシルはもがき苦しむ… それはユーリの解き放たれた力に自分という人格が押し潰されそうに感じたからだ。
ユグドラシルの轟く悲鳴にも近い怒声に、精霊たちは自分たちの意思に反してユーリへとその敵意を向ける。
けれど…
ユグドラシルが敵わなかった相手に精霊たちが敵うはずがなく、ユーリに近づく前にその力の反動で弾き飛ばされた。
そして、ユーリは…
最後の仕上げとばかりに杖を天高く掲げ、【再起】の最後の句を口にする。
ーー… 途端、掲げられた杖から雷が天へと放たれた。暗雲渦巻く空には一筋の光が差し、荒れ狂う川の氾濫は徐々に静まり、所どころにその深い爪痕を残した。
途中からユグドラシルによって煽られ怒りに我を忘れていた精霊たちも我に返り、そして、この現状に青ざめた。
助かった人々は深く関わった一部を除いてユーリのお陰で助かったことを知らない。ただ、大神官と神子によってこの世界が救われたのだと、彼らはそう信じ切っていた。
ユグドラシルは滅びなかった。
ユーリはユリウスの意思を継いで彼をも守りたかったから。一度は滅び、そして再起の魔法を掛けた今、この世界はやり直す機会を得た…。
しかし、
一度は滅ぼそうとしたユグドラシルを自由にはせず、ユーリはその人格を本体の世界樹の奥深くの意思に封印した。
ユーリも力の代償を支払った。
それは死ぬことのない永遠とも言える不老不死の力…。内に秘めていた巨大なる力を一気に解き放った影響で、その巨大な力が小さなユーリの体に大きな負担を掛けてしまわないように、自然の摂理で得てしまった本人も不本意な代償だった。
大神官はユーリを畏怖し、全てに口を噤んだ。神子は事の有り様に、世界樹のユグドラシルと精霊に恐怖を抱き、そして生涯、神殿に引き篭もった。
そして、ユーリは姿を消し…
兄のレイドは姿を消したユーリを捜して、神官を辞めて吟遊詩人として旅に出た。その道中、立ち寄る宿で楽器を弾きながら、物語を口ずさむ。
それは、
いつしか伝染病のようにあっという間に広まっていき、各国へと跨いで創世神話となった。後に、親が子を寝かしつけるときに口にするおとぎ話となり、今も語られる昔話となった。
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