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「は!?え、ちょっと待って… 今、なんつった?」
悪ぃ… よく聞こえなかった。と眉をしかめるキサラにユリウスは再度言った。
『だから、お前たちの世界にいたアシ「マジかよ!?え、あのバカが!?あのバカ王子が元凶だって?」
なんつー悪夢だ… 聞き間違いじゃなかった!と頭を抱えて項垂れるキサラにユリウスは微かに眉を寄せる。
『言っておくが、別にユグドラシルは根は悪い奴じゃない。人間の驕りと欲深さに失望してグレた結果、ああなったんだ。あれを庇うつもりはないが、お前たち人間にもこうなった一因はある』
些か気分を害した様子のユリウスにキサラは静かに溜め息を吐く。
「……わーったよ!で、俺は何をしたらいいんだユリウス様?」
少し棘を含ませて様付けで呼んでみたものの、
『別に何も。…敢えて言うなら、ユーリと合流しろ。あれも… ユーリと同じように幾度と転生し、そして、お前たちの世界で大切なモノを見つけた。
今まで何も持たなかった者が大切なモノを手に入れたとき、それを守ろうとする。……無論、あれも。
そのことに気付いているだろうが、記憶を取り戻しているだろうあれが過去を忘れてそれを認めるかは… また別の問題だろうな。恐らく、ユーリはそこを突いて来るはずだ』
「大切なモノを手に入れたとき…?なんだよ、その大切なモノって」
首を傾げるキサラにユリウスはクツリと喉で笑った。
『あるだろう?……昔から劣らず、どんな魔法よりも強い魔法が』
「…… どんな魔法よりも?」
首を傾げるキサラに、口角を上げた。
『【恋】だよ』
「こ… こい?」
うわ、砂吐きそうと言うキサラにユリウスは可笑しそうに笑う
『お前にはまだ早すぎたか?まぁいい。お前も好きなヤツが出来たら掛かる魔法だ。どんな妙薬でも決して消すことは出来ない… ある意味、不治の病。
あれは今、過去の自身とその恋の狭間で苦悩している。だからユーリは戦うことを選ばず、ユグドラシルを説き伏せるつもりだろう』
恋、ねぇ… 可笑しげに笑うユリウスを何が可笑しいのかとキサラは胡乱げに見つめた。
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