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「まあ今回もよろしく頼むぜ美奈」
「頼られるのは嬉しいけど、なんか違うような気もするんだよね」
頭の良い幼馴染を持ってよかったと拓也は思う。自分がダメな人間だと理解しているからこそ、美奈の存在の大きさは身にしみてわかっているつもりだ。
それからいつもの通り道を二人並んで歩く。春には咲いていた桜の木はすっかりと普通の木になっている。こうした一つ一つの景色で季節の移り変わりというものがわかるから、なんとも気分がいい。
「ねえ、久しぶりに公園寄っていかない?」
「おっいいね」
拓也と美奈の家から歩いて五分くらいのところに大きな公園がある。観光名所が何もないこの町で唯一といってもいいほど人気の場所だ。親が仕事で留守にしている時はよくこの公園で二人遅くまで遊んでいた。中学校に入った辺りから行く機会が減ったが、たまにこうして二人で訪れている。
『桜ヶ丘公園』と書かれた石碑の横を通り、公園へと入る。まず目に付くのは真ん中にそびえたつ大きなイカの形をした遊具だ。
「こうしてこの年齢になって改めて思ったんだが、この公園って本当に大きいよな」
「何を当たり前のことを言ってるのよたっくん」
「いやさ、小さい頃と今の感覚ってなんか違うじゃん。例えばずっと遠くだと思っていた場所が案外近くにあったりとかさ」
「それはわからなくもないけど・・・」
「だろ?それなのにこの公園は今も昔も感覚が変わってないんだよな~」
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