始まり

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 夏の強い陽射しが教室を照りつける。季節は本格的な夏へと差し掛かっている最中だ。そんな中、最も陽射しを受けるであろう窓際の一番後ろの席に何の取り柄も無い平凡な高校生が座っている。    彼の名前は桐谷拓也。この高校に通っているどこにでもありふれた高校一年生だ。特別学力が良いとか運動神経も優れているとか完璧なスペックが何一つ無い平凡な高校生である。 「だからだなこのKの心情はだな・・・・・」    前には片手に現代文の教科書を持った先生が立っている。今は授業中だ。学期末テストも近いため、他の生徒は先生の話を聞きこぼすことなく真剣に聞いている。だがそんなことはお構いなしに拓也はただただ空を眺めていた。    澄み切った夏の青い空は見ていて飽きない。今年もまた夏がやってきたのだと拓也は思う。    特別夏が好きではない拓也だが雲ひとつ無いこの青空を見れば、自然と好きな季節を聞かれたら夏だと答えるに違いない。    過去に特別な思いが夏にあったわけではない。十六年間平然と過ごしてきた拓也に日常の大きな変化なんてあるはずもなかった。    でもなんとなく、なんとなくだがこの夏自分の身に何か大きな出来事が起こるのではないかと予感している。    (ただの思いすごしかもしれないけどな・・・・)
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