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「おい桐谷。話を聞いているのか?」
呆れた表情で先生が拓也を注意する。当の本人は勿論話を聞いているわけがない。だがここでそんな馬鹿正直なことを言ったらどうなるかわかったものじゃない。
「聞いてますよ」
「じゃあそのページ読んでみろ」
(どこのページだ?)
パラパラと教科書をめくっていく。今やっている授業の内容くらい理解している拓也はその辺らしき所をピンポイントで探しているが見つからない。焦りだけが拓也の体を襲った。
「・・・・・42ページだよ」
後ろから声が聞こえ、慌てて指定されたページを拓也は開く。
「向上心のないものはバカだ・・・・」
先生の合図があるまで拓也は読み続ける。面倒だなと思いながらも、先生に逆らうことは出来ない。
「よし、そこまで」
安堵のため息をつき、再び椅子に腰掛ける。拓也は思い出したかのように後ろを振り返った。
「ありがとな」
授業中なので小さい声で後ろに座っている女生徒に話しかける。
「ちゃんと聞いてないとダメだよたっくん」
「はーい」
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