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流石にまずいと思った僕は、表情でまた後でと及川君にアイコンタクトをとった。先生もそれには納得したようで、止めていた話しを進めた。
先生の話しも終わり、クラスメートはぞろぞろと、学校の外で待っている親の所に戻っていく。入学祝いなどで、どこか食べに行くんだろう。ぼんやりしながらも、帰る支度を始めると後ろから軽く背中を叩かれた。
「おい、お前…あおって呼ぶのか? 」
声をかけてきたのは、先程僕と一緒に担任の先生の怒りを買った及川君だった。椅子にまたがる形で僕は、尋ねてきた及川君に説明した。
「蒼って書いて、あおいって読むんだよ」
「へぇ~、変わった読み方すんだな。あれか? キラキラネームって奴? 」
君には言われたくないよと、僕は若干顔をひそめた笑い顔で頷いた。
及川 龍也は穴がたくさんついたピアス耳を弄り、人懐こい笑顔を見せる。
教室にある時計に目をやって、龍也はリュックサックを背負う。先程と変わらない笑顔で、話しかけてきた。
「お、俺そろそろ行くわ。じゃな、蒼」
「うん。また明日」
教室を出る間際、まだ教室に残る僕に、龍也は物珍しく目を見張る。
「おい、蒼。お前まだ居座るつもりかよ? お前、親は? 」
心無い彼の言葉に、僕の中から冷めた言葉が出た。
「…来てないよ。家庭の事情でどうしても」
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