怪異究明部

もののけと桜

　いつも心のどこかで感じる孤独から目を背けると、外の春風に散った葉桜が僕の目に入った。そして同情を寄せるように、風が凪いだような気がした。

「…ここの高校…。音楽室は四階なんだ。図書室が三階で…」

　片手に持っているのはホームルームの時に、担任教師から配られた学校便り。

　裏面にはこれから三年間、お世話になるであろう校舎の地図が載っている。

　僕は地図の通りに様々な移動教室に、足を運んだ。

「へぇ…、きちんと部室まで地図に載ってる…」

　中学に居た頃の校舎案内に、懇切丁寧に部室の場所までは載っていなかった。意外性と新鮮味を感じて、僕は何段と続く階段を駆け上がった。

「ふぅ…、これで一通り見終わったかな…、あれ…？ 」

　地図の中に、この建物の中で唯一名前が与えられていない部屋がある事を、僕は気が付いた。