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「落ち着いて栄一! 凄い事故だったのよ。車なんか大破して原型を留めてないくらいよ。……車に挟まれたあんたが助かったのは、奇跡だったのよ……」
母親は今にも泣き出しそうな態で話すので、俺は泣かれては居心地が悪いと、話題を変えた。
「ところで里美は? きっと酷い怪我なんだろうけど、無事なんでしょ?」
怪我をしたのに無事と云うのも可笑しな話だが、母親の高ぶる気持ちを抑える為に明るく話した。
……だが母親は真剣な眼差しで俺を見つめて黙り込み、やがて泣き出したのだ。俺は泣き啜る母親に、
「大丈夫だって、右足は無くなったけど左足が有るから、何とかなるって」
と、明るく振舞った。
やがて母親は鼻を啜り、涙混じりに話し出した。
「いいかい、落ち着いて聞くんだよ。……里美ちゃんは、助からなかったわ」
「は?」
「……居ないのよ、もう……亡くなったのよ」
体がガクガクと震え出し、頭が真っ白になった。
「う……嘘だぁぁぁぁ」
俺の絶叫が病室に響き渡り、続くように母親の啜り泣きがこだました。
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