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 里美が死んでしまった。    結婚式を翌日に控えて、これからだと云う時に俺を置いて里美は死んだ。  ……これから待っていたであろう幸せな出来事も、何もかも果たせぬままに1人旅立った。    ――俺は悔やんで自分自身を責め続けた。……あの時、弁当屋になど向かわなければ……と。    それからの入院生活を俺は呆けて、ただ無気力に過ごした。母親は心配して毎日来て俺を励ますが、その言葉は俺の耳には届かない。友達も来て気遣ってくれたが、俺の心は反応しなかった。ただ、里美の両親が見舞いに来た時だけは、心が揺さぶられて泣きながら謝罪した。    里美の両親は、俺に罪は無いし、恨んでなどいないと云ってくれたが、いっその事、責めてくれたほうが気が楽だったかも知れなかった。    ――そして俺は、何の目的もなく、1ヶ月の時を過ごした。    この1ヶ月は来客が絶えなかった。車の保険屋に、トラック運転手の家族の謝罪。おまけにトラック運手手が刑事を伴い、手錠姿で現れたが、俺は怒り、追い返した。    「お前が居なければ里美は死ななかった! お前は死ね! 死んで償え!」    里美を殺した男は謝罪もそこそこに、逃げるように帰って行った。
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