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賞金しめて14億円也。
確かに当たることを夢見てクジを買い続けて来たのだが、想像だにしない大金に、自分の身に何か良からぬ災いが降りかかるのではないかと、恐れ出した。
朝6時半になり、里美が目を擦りながら寝室から現れた。
「何、眠らなかったの? そんなにパソコン見つめなくても当たりクジは飛んでいかないわよ」
里美の笑顔混じりの比喩に、俺は真剣な眼差しで説明した。
BIGが6億円当選したこと、一夜にして14億円もの大金を手にした俺には、災いが降りかかるかも知れないこと。俺は不安を里美にぶつけた。
「バカねぇ、考え過ぎよ。確かに14億もの大金を手に入れたことは信じられない幸運だけど、只単ににツキに恵まれただけだわ。十分気を付けて今までどうりに暮らして行けば、災いなんて起きないわよ」
里美は震える声で俺に諭すが、鵜呑みには出来ない。
「せめて今日だけは仕事を休んで、部屋に閉じこもっていてくれ」
との必死の懇願に、里美は渋々ながら従ってくれた。
部屋に閉じ篭って過ごす1日に、俺の不安は安らぎつつある。そうさ、唯唯幸運に恵まれただけさ……と思い込んだ。
*
翌朝、それでも俺は十分過ぎる位に注意を巡らせて、会社へと出勤した。信号を渡る時は右見て、左見て、更に右を再度確認してから左の安全を認知して、恐る恐る信号を渡ったものだ。
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