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ベントスとは俺の勤務する工場横の敷地で営んでいる、行き着けの弁当屋である。コンビニと違って出来たてなので旨さが違う。昼食によく利用する店だった。独身最後の日を友達達は共に過ごそうと誘ってくれたが、俺は頑なに断った。なんせ自宅が1番安全なのであるのだから。
車線を変えてベントス方向に向かった。
弁当を買ってから里美を実家に送るつもりだったのだ。
その方が里美を送ったあと帰りやすいと云う理由で……。
ベントスを目と鼻の先に捕らえた交差点で、黄色になったのでスピードを緩めて止まった。
よく黄色で突っ込む車がいるが、あんな危ないことを今の自分は到底出来ないのだ。
「明後日にはイタリアだね。青の洞窟楽しみだなぁ」
「う、うん」
「真実の口に手を入れると、栄一は手が無くなっちゃうねぇ」
「……」
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてるよ!」
俺は少し強い口調で答えた。里美はイタリア旅行に心を躍らせて話して来るが、俺は浮ついた気持ちにはなれない。……勿論イタリア旅行は楽しみな気持ちはある。なんせ俺が強くイタリア旅行を勧めたのだから。
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