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「何でこんなトコで泣いてんの?」
「え、えっと…………」
し、心配してくれてるの?
……なんだ、案外いい人じゃん。
「実は……、友達とライブに来てて……、でもなんか居づらくて会場抜け出しちゃって、先に一人で帰ろうとしたら、道に迷っちゃって……」
言いながら、ちら、と先輩に目を向けると、
「…………」
何故か物凄い無表情。
な、何?何考えてんのか、全然分かんないこの人!
「…………それで?」
……いきなり続きを促された。
私は、仕方なく続ける。
「その友達に電話しようとしたら……充電切れてて、電話できなくて……どうしたらいいか分からなくなって……」
話している内に、何故か言い訳してる子供のような気分になってきて、思わず語尾が小さくなる。
そうやって私がゴニョゴニョしていると、先輩が言った。
「可哀想だね」
「えっ、いや……」
まさか、先輩からそんな言葉を貰うとは思っていなかったので、私はオドオドと手を振って、先輩を見上げた。
しかし、そこにあったのはとてつもなく冷たい表情をした先輩の顔。
間違っても、優しい言葉をかける時の表情じゃない。
訳がわからず青ざめて固まる私を一瞥しながら、先輩が口を開く。
「"お前が"じゃないよ。お前の友達が"可哀想"」
「…………え?」
リ、リサが……可哀想?
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