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私達1年が、上級生のクラスに出入りする事はあまりない。
部活なんかに入ってたりしたら、ちょっとはあるのかも知れないけど、完全帰宅部の私にはまるで縁のない場所だった。
「な、何かちょっとドキドキするね……」
「そうかぁ?なんで?」
「なんでって……」
カオルの背中に隠れるようにしてオドオド歩く私を余所に、カオルは特に気にする様子もなく3年棟の廊下を突き進む。
こういう時、いつもは面白いだけのカオルの能天気さが頼もしく思える。
私は、カオルから離れないように小走りでその後を追った。
「全員揃ったか?」
「3Aがまだ1人来てません」
体育委員長っぽい、如何にもスポ根!みたいな先輩が席についた私達を教壇から見渡すと、何処からともなく1人来てないとの報告があがる。
「A組は……伊ヶ谷か」
不在の人物が分かると、小さなため息をつく。
その時だった。
教室の後ろの扉が、ガラリと開いた。
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