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未来の遠くにあると思っていたものがどんどん自分の近くに落ちていって。
ただそれを拾えば幸せになれるかのようなここ数年。
あまりの嬉しさに両手ですくったものを数えようとしてこぼして、あせってまたこぼす。
落ちたものをすくおうとしてまたこぼす。
もういいやと思って全部諦めて捨てようと思っても手にこびりついてその名残を消さない。
消えることない温もりが永遠に残る。
宏之が生まれて2ヶ月と24日、宏之の首も据わってない頃。
広志が胃ガンに殺された。
いくつもの思い出と優しさを残して。
若いとガンの進行も早いという。
きっとガンになってから半年も経っていなかったんじゃないかと言われた。
宏之は広志の優しさを知ることなく育っていくんだ、と思うと大きなものが私からも宏之からも欠けているようだった。
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