いざッ!

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決意を露わにしたところで リヒト「寝るか」 メイト「ん」 今にも眠ってしまいそうな明人とごろんと寝転がる。 勢いがよかったのかふわりと羽が舞う。 その幻想的な光景に少しの間心奪われる。 明人はすでに目を閉じていた。 すぐに寝息をたてだした明人をしばらく見つめて目を閉じる。 すぅすぅと明人と同じ寝息をたてていると聞こえなくなった寝息。 さらりと頬にかかっていた髪を梳かれた感覚。 またか、と思う。 頬に手を添え目尻を撫でられる。 そこからギリギリ外れたところに柔らかい感触。続いて目尻にも。 メイト「りひと……」 名前を呼ばれてドキリとする。 切なげな声にどんな感情が込められているのかは、わからない。 少しの沈黙のあと聞こえだした寝息にパチリと目を開ける。 明人がしていたように髪を梳き頬に手を添え、唇の端と目尻に唇を押し付ける。 100年の間もはや日課となってしまったこの行為。 お互い起きているのがわかっていて知らないフリをする。 いつもは手に取るようにわかるお互いの気持ちも、このときは全くわからない。 じっ、と鏡に映したようにそっくりな顔を見つめてどうしようもない愛しさが込み上げる。 兄弟愛なのか恋人にむける愛なのかわからない気持ちにもどかしさを感じる。 お互いその気持ちからか、唇にはキスをしない。 ”本当の“寝息をたてだした明人の唇を親指でなぞって涙がこぼれそうになる。 明人の目尻についている涙のあと どんな気持ちで流したのかわからない涙。 この寝る前の行為が唯一俺たちを妨げる壁だ。 いつかこの行為の意味をお互いに話せるようになる日が来ることを祈って目を閉じる。 しばらくして、どろどろの闇に溶けるように意識が落ちていった……。
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