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刹那
囁かれるように頭の中に入ってくるおびただしい数の情報。
それを入ってきたと同時に処理して纏めていく。
へー……。
パチリと目を開ける。
こっちを見ていた明人と無言で額を合わせる。こうすることで情報を共有することができる。
至近距離で伏せられた明人の目。縁取る睫毛はそこらの女子より長いだろう。
自分もこんな感じなのだろうか?
俺らの親友の彼には女にも男にも見えるって言われたな……。
思い出して沈む気持ち。
ふと目線を上げた明人と目が合う。
至近距離でガン見してしまっていたようだ。
明人と至近距離、目が合うという状況が恥ずかしい。
どちらともなく離れてその場に座る。手は繋いだまま。
メイト「まさか、彼が、ね」
リヒト「……ぁあ」
お互い消えるような声が出た。
そんな声になってしまうような状況だった。
ハーレム野郎の幼なじみで幼い頃から苦労してきた彼。
そんな彼と出会ったのは10歳の頃。
俺たちという暗殺者ができあがったあとだった。
ハーレム野郎のせいで風当たりのきつかった俺たちに、初めて偽善や同情ではなく純粋な笑顔を向けてくれた人物だった。
そんな彼はいろんな人に慕われていた。
彼はハーレム野郎のそばにいたせいで風当たりがきつかったが、救われた人は多かった。
俺たちもそうだった。
俺たちは心を救われた。
彼はよく「俺は巻き込まれ系脇役だ」とか「リア充爆発しろ!」とか「お前ら2人のやりとり萌える!……けしからんもっとやれ!」とかよくわからない事を言っていた。
……話が逸れた。
いろんな人に優しかった彼。
わかる人には慕われていた彼。
そんな彼の現状が俺たちには衝撃的だった。
メイト「殺し屋、か」
グッとつまる息。
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