彼の足跡

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双子の親友SIDE 暗い倉庫の中理人と明人が動かなくなった。 今すぐ彼らのところに駆け寄りたいのに、足元に光る魔法陣と自分の腕を掴む忌々しい手のせいで動けない。 俺はファンタジー小説とかを読んでいたからわかる。 これは勇者召喚の魔法陣だ。 やっぱり俺は巻き込まれ脇役だったか……なんて諦めもあるが今はそんなこと思ってられねぇ。 彼らの下に行きたい 彼らをちゃんと送り出したい いっそのこと彼らと一緒に眠りたい。 「離せっ!」 彼らのところに行かねえと! 「やだよ!これなんなの!?」 いっそう強くなった握る手と魔法陣の光。 チッ 舌打ちがでる。 このままじゃあ巻き込まれる。 ならせめて彼らが死ぬ原因になった女だけでも……! 近くにあった物を手に取る。 頬を伝う水が邪魔だが射撃は得意な方だ。 手を離してくれる気配はないから安定の悪い片手で構える。 「え?何してるの?」 問いかけを無視して手に力を入れる。 狙いは、頭。 確実にしとめてやる。 初めて触れる人の死に少し手が震えるがどうでもいい。 もう二度と彼らに会えないからどうなってしまってもいい。 パァンッ 乾いた音が響くと同時に吸い込まれる感覚。 「っ!?」 「わぁ!?」 ふっと変わった視界にあれ?こういうときってブラックアウトすんじゃねえの?なんて思いつつ、当たったかどうかも確認できなかったことに涙がでる。 放り込まれた黒い暗い空間に放心状態で座り込む。 掴んでいた手の持ち主はいない。 小説通りなら…… ここは、神の間かなにかか?
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