彼の足跡

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腕を掴まれたまま無駄に長い、門から玄関までの道を引きずられる。 ギル「今帰ったぞー!」 ユウマ「……。」 意気揚々とドアを開けて正面にあった階段を上って沢山ある部屋の一つの前に立つ。 ここまで使用人には会わなかった。 中には大きな魔力が一つ。緩やかな流れから寝ていることがわかる。 まさか……このドアも勢いよく開けるつもりか? あきらか部屋の主は寝てるのに? バンッ! ギル「エリ、新しい息子だぞ!」 嫌な予感は的中。 エリ「うっせえぇぇぇ!!“ウィンドカッター”」 寝ていたのは青年。 起きたと同時に風の刃を飛ばしてきたから、片手を前にかざして無詠唱で”ダークシールド“を発動させた。 無詠唱を使ったところでハッとする。 この世界で無詠唱は人間にはできない。 無詠唱は人外、しかもかなり高位の者しかできない。 青年の攻撃をもろにくらったギルは唸ってしゃがみこんでいる。 エリ「だぁ~くそっ!疲れてんのに」ブツブツ 頭をかきむしるエリと呼ばれた青年。 見られてない……? ふぅ……。 魔力探知でギルは闇帝エリは総帝っぽいと思ってたから焦った。 とっさに無詠唱を使ってしまうクセ直さねえとな。 エリ「で?新しい息子ってどういうことだ?」 顔を上げた青年の目は緑と、青。 ドクンと心臓がなる。 ユウマ「あ、お……?」 エリ「あ?お前か新しい息子ってのは……目か?緑と青だがそれが、どうした?」 自嘲気味に言った青年の言葉なんて聞こえない。 りぃやめぃに似た目の色。 すっと自分が出せる速さを全力で使って青年に近づく。 ユウマ「りぃの色だ……めぃの色だ……」 呟きながら涙が零れる。 エリ「ッ!?はぁ?お前なに言ってんだ?」 涙は止まらない。
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