彼の足跡

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知らない場所へは転移できねぇから自力で行かねぇと。 この世界に来る前にハデスにもらったフード付きの黒いコートを“ボックス”から取り出す。 『フェンリル送ってあげる』 ユウマ「闇の精霊か……ありがたい」 突如闇の中から聞こえた声。 世界の意思はまだ俺というフェンリルを認めた訳じゃないらしく、手助けはしてくれるが姿は見せてくれない。 『じゃあ行くわよ』 俺の返事を聞く前に闇が溢れ出してくる。 闇に包まれる感覚。 浮遊感もなにもなく、ただ空気が変わった。 「ッ!?」 驚く気配と闇が散る感覚。 反射的に閉じていた目を開くと書斎のような場所。 目を走らせると立派な机に山積みの書類、20代半ばの男性。 『あれが今の王よ』 闇の精霊に連れてきてもらったのは王のところ。 王「誰だい君は?」 落ち着いた様子の王。 へぇ面白いな、と思う。 馬鹿ならここで慌てるだろう。 驚きはしたがすぐに落ち着いたのか。 ユウマ「簡単に言う、俺をお前公認の殺し屋にしろ」 腐った貴族なんていらないだろ?と続けざまに言う。 沈黙が流れる。 王「もし認めたとして、君は何がしたい?メリットは?」 聡明な王だな……。 殺してほしいやつらは居るが、国の安全を考え簡単には頷けれない、か。 ユウマ「俺は腐った人間が嫌いでな。殺したいが、お尋ね者にはなりたくない」 王「……。」 ユウマ「俺は国の配下に下るつもりはない。だが俺はお前が気に入った。だからお前だけが知っている、お前公認の殺し屋にしろ」 かなり無理矢理な理由だと思う。でも、この条件で認めさせてやる。 それに、面白いとは思うけど気に入ってはいないが、こう言った方が安心するだろ? 王「……いいだろう。認める。」 長い沈黙の末放たれた言葉。 にたりと笑う。 王になんの葛藤があったかなんて知ったこっちゃない。 ああ、これで主のための世界作りに一歩近づいた。 嬉しさが溢れる。 ユウマ「……交渉成立だ。」 俺は主のために働くまで。 ーーーーーーーーーー こうして数日優真は死の足音として国中を騒がせることとなる。
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