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「勇者を攫ってくるのだ」
魔王の言葉にエビルプリーストもダークフェアリーも首を傾げた。
「始末するのではないのですか?」
「攫って来いと余は言ったぞ。その後の処遇はその時に決める」
――主である魔王になにか考えがあるのだろう。そう思ったエビルプリーストは命令を承諾する返答をする。
「分かりました。アーカイムはレヴィアタン殿の担当区域。故にレヴィアタン殿に話を付け、任務を任せるとします」
エビルプリーストの言葉に、魔王は満足気に頷く。
「うむ、任せたぞ」
魔王の間を出るとエビルプリーストを待っていたのか、1人の人物が声を掛けてきた。
「どうでしたかな? 魔王様のご様子は…エビルプリースト翁」
威風堂々という言葉が似合う武人であるこの人物こそ、魔王直属の精鋭“七魔人”が1人『レヴィアタン』その人だった。
エビルプリーストは丁度良いと魔王の勅命を告げると、レヴィアタンはニヤリと笑う。
「お任せ下され。直ぐにでも、勇者を攫って参りましょう。ついでにアーカイムも滅ぼしても構いませんね?」
「大事の前の小事じゃ、構うまい」
エビルプリーストの了承をえたレヴィアタンは残忍な笑みを表面に映し出す。
「では、早急に対応致しましょう。吉報をお待ちくだされ」
そう言って去っていくレヴィアタンを見送っていると、エビルプリーストの後方から、甲高い声が響き渡った。
「ダメーーーー!!!」
エビルプリーストとレヴィアタンが同時に声のした方を向く。先程の声の主はエビルプリーストの使い魔であるダークフェアリーからだった。
「ダメだよぅ! ご主人様、魔王様は勇者を攫って来いとしか言ってないよ。勇者がいる国を滅ぼせとは言ってないんだからぁ、勝手なことはしない方がよろしいかと……」
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