勇者、誕生

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 アストラル歴763年 金未の月  「ふぇ~ん、サキュバスさん。赤ちゃんが泣きやみませ~ん。どうしたらいいですかぁ~?」  「なんで泣いてるのかも分からないの、ダークフェアリー? 身体も小さいと中身もお子様ね。 いい? 赤ん坊でもこの子は女よ! つまり、男を求めてるの! さすがは勇者……恐ろしいコってアイタ!!!」  ポカッと側に居たヤクシニーがサキュバスの頭を叩く。  「わたくしは貴方の頭の中の方が恐ろしいですわ。お~よちよち、お腹が空いていたのですよね~。はい、おっぱいですよ~」  赤ん坊にミルクを与えるヤクシニー。  「誰が身体が小さければ中身もお子様ですか~!! 怒ったですよぉ~!!」  ポカポカとサキュバスを叩くダークフェアリー。  「あ~、キモチイイ♪ ダークフェアリー、あんたマッサージの才能あるかも? アッソコ、ソコがいいの♪♪♪」  「えへへ、そうですかぁ♪ って、違うですぅ、痛がるですよぉ!」  顔を真っ赤にして、ポカポカと叩くダークフェアリー。それを受けて、恍惚した表情を浮かべるサキュバス。ヤクシニーは愛しそうに胸に抱える赤ん坊にミルクを与えている。  「なんともまぁ平和ですな」  「うむ」  魔王とエビルプリーストは頷き合い、この生まれて初めてみる光景をただ眺めていた。  「あ! サキュバスさん、こんな小さい私ですけどぉ~彼氏いますんでぇ、わ・た・し♪」  「「な……んですっ……て!?」」  瞠目するサキュバスとヤクシニー。  「不毛な争いはまだまだ続きそうじゃな」  魔族にとって新しい日常。そんな平和で激動な日常から5年後、エビルプリーストは自分でも信じられない体験をした。
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