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魔族と人間が世界の主導権を巡って争う世界『アストラル』。
互いの種族が互いの領土を侵略しようと一進一退の日々が流れる中で事が起きた。
魔界で魔族の王が住む通称“魔王城”『パンデモニウム』。
その最深部である魔王の間を目指して、1人の初老の魔導師が疾走していた。
「魔王様! 大変ですじゃ~!」
初老の魔導師が魔王の間の扉を押し開こうとするも、扉が重いのか中々開かない。
「え~い! 毎度毎度、重いんじゃ! この扉! なんで、こんなあからさまな扉にするかのう」
物言わぬ扉に悪態つきながら、初老の魔導師は扉を開け放ち、魔王の間へ重い足取りで中に入った。
「なんだ? 騒々しいぞ! エビルプリーストよ」
正面の玉座に座って、魔王の間に入って来た初老の魔導師を『エビルプリースト』と呼ぶ者こそ人間の天敵、魔族達の王である“魔王”である。
「それが、ぜぇはぁ、大変、なんですじゃ、はぁはぁ」
「………………」
息も切れ切れに話そうとするエビルプリーストを魔王はなにも言わずに玉座に座って見ている。
ふらふらとエビルプリーストが魔王と謁見する定位置に着く。
「ふぅ、ちょっと一息」
そう呟くとエビルプリーストは、ゴソゴソと衣服を弄り、普段から持ち歩いているのか水筒を取り出した。
「ごくっごくっぷはーっ旨い! 運動したあとの水は格別じゃワイ」
「……………………」
水を上手そうに飲むエビルプリーストを魔王はなにも言わずに玉座に座って見ている。
「どれ、一息ついたんで帰ろうかの」
エビルプリーストはクルリと反転して――。
「では、魔王様、失礼しますじゃ」
「待て! エビルプリーストよ。余になにか報告があったんではないのか?」
魔王の呼び止めにエビルプリーストは不思議そうに首を傾げる。
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