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「………はて? 忘れましたワイ。なにか大切な用事があった気がしましたが……忘れるくらいですから取るに足らぬことかと。思い出したらまた馳せ参じますじゃ」
では、と魔王に背を向け、魔王の間を出ようとしたエビルプリーストだったが――。
「はい! ドッコイショー!!!」
「ぐべらっ」
突然、エビルプリーストの目の前に何処からともなく丸太が現れ、エビルプリーストを魔王の間へと吹っ飛ばした。
「な、なんじゃ!? 何が起きたんじゃ!?!?!?」
「もう! なに帰ろうとしてるんですか!? 仕事放棄ですよ? 何より、存在意義まで手放す気ですか!?」
混乱しているエビルプリーストの頭上から、黄色い声が届く。
ゆっくりとエビルプリーストは声の方を向くと、そこには小さい女の子がいた。
人間の手の平に乗るくらいのサイズの身体を浮かせるためにパタパタと動く羽、愛らしい表情からして妖精と呼ばれるタイプだが、その女の子は褐色の肌と一般的な妖精とは姿見が違う。
「……なぜ、お主がここに? それより、さっきのはお主の仕業か? 何をしおった!?」
エビルプリーストの怒号を受けながらも、褐色肌の妖精は慌てた様子もなく甲高い声で返す。
「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ。ご主人様、お体に障りますよ?」
おちょくるような物言いにエビルプリーストは腹を立てそうになる。
「まったく誰のせいで怒っていると思ってるんじゃ! ダークフェアリー! とんだ跳ねっ返りの使い魔じゃわい」
再度の怒りの声にダークフェアリーと呼ばれた褐色肌の妖精は反省したのか、主人であるエビルプリーストの肩に止まる。
「うわわっ! 血管がスゴい浮かび上がってる! スゴいすごぉ~い! おもしろぉ~い♪ 触ってみていいですかぁ?」
楽しそうに額に浮かぶ血管の筋をぺたぺたと触るダークフェアリーを見て、項垂れるエビルプリースト。
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