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「勇者と言っても、所詮は赤子。放っておけい!」
魔王の言葉にエビルプリーストは驚き、反論を返す。
「ですが魔王様。今のうちに勇者を始末しなければ、のちに大きな障害となって魔王様の前に……」
「エビルプリーストよ! そなたは余が人間たちが苦し紛れに奉り上げた偶像ごときに負けると思っているのか!!」
魔王の怒声が辺りに響き渡る。
「いえ、そのようなことは……」
「無いと申すのなら今、お主がやるべきことはなんだ? 世界を我が魔族のものにすることであろうが! 分かったら、人間界への侵攻を開始せんか!」
「はっ、思慮浅く申し訳ありません。……では、失礼致します。いくぞ、ダークフェアリーよ」
エビルプリーストが自身の使い魔に声をかける。反応がない。どうしたものかと顔を覗き込むと――。
「魔王様……カッコイイ」
ウットリとした表情でダークフェアリーが呟いた。
「ほれ、いくぞ」
「いたい、いたい! 御主人様! 羽を掴んで引っ張らないでください」
けたたましく叫ぶダークフェアリーの抗議を無視して、エビルプリーストは魔王の間を後にした。
「どうでしたかな? 魔王様のご様子は…エビルプリースト翁」
魔王の間を出るとエビルプリーストを待っていたのか、1人の人物が声を掛けてきた。
その人物の姿は皮膚は緑の鱗に覆われ、見る者も圧倒するような禍々しい鎧を身に纏い、腰に下げる魔剣は幾多の英雄を殺したといわれる『ティルフィング』。稀少種族『龍人』であり、魔王直属の精鋭七魔人が1人『レヴィアタン』その人だった。
エビルプリーストは普段から口にしている言葉をそのまま、レヴィアタンに告げる。
「いつもの通りじゃよ。さっさと世界を我が魔族の手に……じゃ」
毎度毎度のやり取りを互いにこなし、その場を後にするところであったが次のレヴィアタンの言葉がエビルプリーストの足を止めた。
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