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わざと嫌な顔をして、手で風を避けるようにする。
それでも、面白がっているのか、笑いながら止めないので、咲月の腕を掴んで無理矢理下に押しやる。
今度は自分を扇ぎだした。
しばらく黙りこんでしまう。
沈黙を破ったのは―
「ははっ。久し振り、お二人さん」
突然現れたもう一人の友人。
見た目とは裏腹に若干気が弱いやつ。
夏なんか気にしないと言った様子で、日差しがガンガン照り付ける椅子に座る。
「そこ、暑くないか?」
「ははっ…え?何が?」
頭を掻きながら二人を交互に見る。
咲月はまだ扇いでいる。
変わってないな。やっぱり。
さっき来た友人―リックスって名前。
「あ、なぁジェロム。お前が飲んでるやつ少しくれ」
手を伸ばしてねだってきた。
「自分で頼むって選択肢は無いのか?」
「ちょっとだ、ちょっと。お願いします」
手を合わせてさらにねだってくる。
目を逸らしてしばらくしても、同じように。
目が合うと頷けとでも言うように、横取りハイエナが小さく頷いてみせる。
観念してストローを抜いて差し出す。
一瞬、何でストロー抜くんだよみたいな顔をしやがった。
お前の魂胆はバレバレなんだよ。
俺と間接的にやろうとしたんだろ。
隣の咲月もふんと鼻を鳴らして笑った。
…‥おい
「おい、全部飲むなよ!?」
グラスの5分の1ほど残して、俺のところに返ってきた。
ハイエナが、まだ口に含んでいる状態で悪戯っぽくニヤリと笑う。
あーあ…‥
まったく嫌な奴だ
これならストロー使わなくて良いよな、なんて思ってるんだろうか
…だけど、こいつの作戦には乗らないぜ
咲月にグラスを回すと、口を付けずに氷を指で抑えて一気飲みした。
してやったり。
リックスが頬杖をついて俺を見てくる。
…‥なんだよ
言いたいことあるなら直接言ってくれ
…女子じゃあるまいし
俺も心持ち睨むようにしてハイエナを見る。
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