私とワルツを

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私の手を取って一緒に。 踊ってくれませんか? 綺麗な薔薇は要りません。 そんなもの私には似合うわけもないのですから。 ジャジャラとつけられた鎖を解いて。 あなたが持ってるその鍵で。 ピエロが奏でるメロディ、と、詩人が詠う哀しい歌をBGMに。 この純白のドレスに絡まる銀色の冷たい鎖を解いてください。 鎖が外れ、私の足は自由になって、ようやく解き放たれた私に、踊りを一曲申し込んで。 古から伝わる失恋歌。 頬に伝う涙をそっと拭って。 踊りましょう、私とワルツを。 物悲しいメロディに乗せて。 弾くは、笑いを誘う道化師です。 〝あのひとはなぜ、わたしをすてたの?〟 詩人の言葉に余計、涙を誘われながら。 踊る、踊る、踊る。 涙で、飾った白粉が、頬紅が、取れてしまって、元の醜い素顔を晒しても。 あなたは〝綺麗〟と評してくれるから。 私はまだこの純白のドレスを着れるのです。 時計の針よ、狂ってしまえ。 この時間が永遠に続くのを願いながら。 その願いは叶えられないことを知っている。 それでも、くるくる、ワルツを続ける。 あなたの足がとまるまで。 ピアノのメロディが途切れるまで。 歌声が止むまで。 私とワルツを踊りましょう。
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