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それこそ、あたかも真実のように……
アドリブなんてものは後で絶対にボロが出るに決まってる。
だから完璧なシナリオを予め用意しなくてはならないのだ。
そして、そうしたからには一点のズレも許されない。
誰を犠牲にしたとしても、完遂させる――――――……
「ダウト! はいダウト!」
そう待ってましたと言わんばかりにいきり声を上げて指摘する男の名前は吉永伊織(よしながいおり)。
金髪でいかにも俺モテます的な甘いマスクを持っている。垂れた目尻が色気を誘うとかなんとかクラスの女子が話してた気がする。
「残念。一昨日きやがれ」
私は机上の何枚も積み重なっているうちの天辺から二枚のカードを捲って口角を上げた。
スペードの「1」と、ジョーカーを合わせた上がりだ。
「ちょっ、ずるい!」
「ジョーカーで上がっちゃいけないルールなんてないけど?」
「そうだけど~っ」
「相変わらず爪が甘いね」
今ので一気に手持ちが増えた伊織の敗北を嘲るように笑うのは篠原昴(しのはらすばる)。
黒髪で好青年風な昴は生徒だけでなく先生からも絶大なる支持率を得ている。
なんたって学年主席。
それだけじゃなくこのルックスはまず女が放っておかない。
ついで言うと私の幼馴染みだったりする。
「はぁ、分かったよ俺の完敗ですぅ。ほんと佳乃は強いよねー。顔色一つ変えないんだもん。俺ちょー尊敬しちゃうー」
「なんか喧のある言い方だね」
「だってほら見てよ! これ佳乃が出した部分でしょ。よくまあこれだけバラバラの数出せるよね。かと言って迂闊に止めれば本当だったり~」
54枚中その大半を物にした伊織はカードを私達に見せて並び順を示してきた。
てか私だけじゃなくなーい?
一人だけ涼しげな顔して頬杖つく昴だってちゃっかり5枚のトランプを1枚のように見せかけて出してるじゃん! 伊織は気付いていないみたいだけどさ!
私も今気付いたよ!
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