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京のある小路。
ひとりきりのあたしはそのど真ん中に立ちつくす。
知らない町。
知らない道。
ここがどこなのかなんて、わからないけど、ふと見上げた空、それだけは一緒なのかもしれない。
ぼんやりそう考えてた。
真「・・・・降ってきちゃった」
夕暮れ時、雨が潤ませる小路には人の姿はない。
ぽつりと呟いた声が落ちてくる雫に、滲んで消えた。
重く立ちこめた雲。
あたしは傘も差さずにじっと見上げる。
雨粒が降ってくる。
さぁさぁと、ひかえめな音とともに。
木々の、地面の、色を黒に変え、次第に強く・・・・・まるで泣いているみたいに。
真「あなた、ひとりぼっちなの?」
空をぐっと仰いだあたしは呟いて、瞳を閉じた。
真「・・・・・一緒だね」
降水が、世界を寂しくさせる。
それなら、お願い。
もっともっと、降り注いで。
まぶたに、頬に。
次第にしたたり、身体中の肌に。
雫が伝っていく振動は、弱すぎる。
それじゃ足りない。
もっと強くこすって、あたしの身体を、心を、かき消してしまえばいいのに。
まぶたの裏に隠した視界もう一度瞳を開く時。
生まれ変わった世界に、あたしがひとりきりだと、いいのに。
・・・・・・それならこんな気持ち、知らないままで、済むのに。
そんなことをぽつりと思った。
雨はその勢いを、増す。
小路と一緒に、頭の中。黒に塗りつぶされていく。
それに静かに身を委ねようとした。
その時。
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