夏のある日の物語

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蝉の鳴き声が鳴り響き、さんさんと日差しが降り注ぐ。夏休みでそんな中を私は歩く。 「…………暑い」 けれども、歩く。道を歩くのは昔から好きだ。地面をこの足で踏みしめる。そっと胸に手を当てて、軽く瞼を閉じた。 愛とはなんですか?愛情とはなんですか?恋とはなんですか?血縁とはなんですか?友情とはなんですか?友達とはなんですか?家族とはなんですか?男とはなんですか?女とはなんですか? 「私とはなんですか?」 問いかける、問いかける、問いかける。 いつも私はこの世界に問いかける。でも、誰も答えてくれない。 私の中にはたくさんの私が、俺が、僕が、自分が、あたしがいる。みんな私だ。みんな私でみんな友達だ。 私は見たこと、聞いたことだけを信じて生きてきた。そういうふうに問いかけて生きてきた。その過程でたくさんの『私』が生まれていく。その過程でたくさんの『変化』が起こっていく。生身のない友達が増えていく。 生身のある友達は一人もいない。私はどうやら気持ち悪いらしい。気持ち悪いから近づかないでほしいらしい。 けれども、私は思う。集団でいることの何が偉いのだろう? どうして一人でいることが悪いこと、可哀想なことだとだと思われなくちゃいけないのだろう。 わからなくて、わからない、わからないのだけれど、ふっと思考を停止。ストップ、 「迷いました」 その日、私は道に迷った。たぶん、こういう時、助けてくれるのが友達なんだろうと。 「友達なんていませんが」 ま、いいかと歩き出す。友達、友達と考えながら。
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