夏のある日の物語

4/4
前へ
/5ページ
次へ
相変わらず、私はバス停のベンチに座っていた。バスが何台も止まり、シュコーッと音がして扉が開く。車掌らしき男がこちらを見て、乗りますか? と、無言の問いかけをしてくる。 軽く首を横に振りれば、バスが走り去っていき、私はベンチを立つ 『気持ち悪い』『気持ち悪い』『気持ち悪い』どこが気持ち悪いのかわからない。 『死ねばいい』『死ねばいい』『死ねばいい』どうやって死ねばいいかわからない。 『消えろ』『消えろ』『消えろ』どこに消えればいいのかわからない。 『わからない』『わからない』『わからない』 他人は私に何を求める? 何をさせたい? 「わからない」 私は歩く。道を歩く。途方もなく、宛もなく、目的もなく、意志もなく、意味もなく、歩き続けて。 「これが青春というやつですか?」 この世界に問いかける。これが物語だったのなら、きっと私が求める答えが見つかるかもしれない。 自分の見たこと、聞いたことだけを信じて、問いかけ続けた。 「わからない」 それでも、わからない。 「私はどうやって死ぬべきで、消えるべきなんだろう?」 答えが返ってくることはない。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加