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「先生…。
触っても…いい?」
私は楓に手を伸ばした。もう、布越しなんかじゃ足りない。
楓は、私の手をつかんで押し止めた。
「ダメだ。
オレにこんなこと言う資格なんかないかもしれないけど、傷つけたくないんだ。これ以上…、込山の泣くところはみたくない。」
バカだなあ。って、思った。私を傷つけられるのは私だけだ。私が傷つくとしたら、それは私の選択の結果であって、楓のせいなんかじゃない。
「先生…?
私が触れたいのよ。それで傷ついたりなんかしないよ。
だから、先生自身が私に触られたくないなら、突き放して。」
私は楓に手を伸ばして頬に触れた。楓はそれ以上私を止めようとはしなかった。
私はゆっくりと壊れないように楓の背中に手を回した。もう5月とはいえ、20時を過ぎると気温は下がっていたから、お互いの触れた部分が暖かくて心地よかった。
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