咲良-さくら-

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楓は、下ろしていた腕を私の背中に回し、グッと力を入れた。 幸せで、切なすぎて苦しかった。 「込山…?」 楓は、私の耳許でささやいた。 「今だけでいいから…。 名前で呼んでいい?」 私は頷くように腕に力を込めた。 楓は、力を抜いて私の髪を撫でながら、ささやいた。 「…咲良。 咲良…。…咲良…。」 何度も、何度も、何度も。 「一度だけ…言わせて。 好きだよ。咲良。 だから、幸せになれよ。 誰よりも。オレなんかいなくても。」 私には、楓を救うことはできない。助けになることさえも。ただただ、彼を混乱させるだけなのだろうか。
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