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「先生…?
私には…何もできないのかなぁ。」
楓は柔らかく微笑んで、私の目を見た。
「今だけでいいから、名前で呼んで。
先生、じゃなくてさ。」
楓の表情は柔らかくて、それが悲しくて涙が出た。
「…楓。」
楓はゆっくりと私を抱き寄せた。
「咲良。もうさ、こうやって二人で会うのは止めよう。これ以上は辛くなるだけだから。」
私は言葉にならず、左右に頭を振った。
無理だよ。楓を知る前になんて戻れるわけがない。
楓は困ったように微笑んだ。
「咲良。
オレが辛いんだ。咲良を生徒としてみるのは、もう無理だ。でも、美羽を捨てて咲良を選ぶことはどうしてもできないんだ。」
身体中の水分が溢れ出す。ズルい。そんな言い方されたら、嫌だなんて言えない。
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