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「楓。
1つだけ、お願い聞いて。
そしたら、諦めるから…。
できるだけ…、諦めるように頑張るから…」
楓はいい子だと言うように私の髪に触れた。
「オレも、お願いしていいかな?
咲良。夜中に一人で街を出歩かないで。一人にさせて悪いと思ってる。でもさ、心配なんだ。何も手につかなくなるほど。職権濫用だってわかっているけど、放課後を拘束したくなるほど。」
私はコクンとうなずいた。せめて、楓を煩わせたくなかったから。
私の願いを叶えてくれたら、楓の願い通りにするつもりだった。
「楓。私のお願い。
キスして。一度だけでいいから。
そうしたら、諦められる。楓のお願いもちゃんと聞くから。
一人でも乗りきれるように。楓の思い出が欲しい…。」
楓の目は迷っているように揺れていた。
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