21人が本棚に入れています
本棚に追加
楓が私の前からいなくなってから、狂ったように消息を追った。でも、なにも見つからなくて…。いつ頃から姿を消そうって考えてたんだろう。楓は、私が追ってこれないように用意周到に消えた。
楓を探すのを諦めてから、夏休み中壊れた人形の様に過ごした。友達の誘いを断り、テレビもつけず誰とも話さずに。
初めて、両親がほとんど家に居ないことをありがたいと思った。
美術部も辞めた。あの教室は思い出がありすぎて、普通の顔ができなくなる。二学期が始まって、当たり障りない会話ができる程度には快復したけど、楓の形に空いた穴は塞がる気配もなくて。
家の中に一人きりでいると、楓の思い出に囚われそうになる。夏休みの間はそれでいいと思ってた。楓との思い出を繰り返し何度も何度も思い出して、彼がいない現実を忘れたかったんだ。
でも、それじゃダメだって思った。楓は私に「幸せになって」と、言ったから。だから、少しでも抜け出そうと思ったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!