咲良-さくら-

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一人きりの部屋では思い出に囚われてしまう。でも、一人で街を出歩かないって楓と約束したから。 放課後、学校が終わると私は家の近くにあるこの公園に向かう様になった。家からここまでは比較的車の通りも多いし、近くには交番もある。 約束、破ったことにならないよね? 一人きりの部屋は思い出にむせかえりそうになるけど、ここは視界が開けてて楽に呼吸ができるような気がするんだ。 もう二ヶ月、この場所に通ってる。 はじめの頃はちらほら人もいたけど、10月も終わろうとしている今、この場所に来るのは私一人だ。 吹き付ける海風に体を震わせながら、自動販売機で買ったミルクティーをゆっくりとすする。 いつまでここに来れるだろう? これ以上寒くなったらここに何時間もいるのは難しくなる。 携帯をポケットから出して時間を確かめる。 10月29日、20:30。友人の誕生日だったな。て、思った。今日中にメールくらいはしなければ…。 あと30分だけ。そう思い、携帯をベンチの上に置く。 その時、背後で車のとまる音がした。私以外の人がこの時間ここに来るのは、本当に珍しい。
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