咲良-さくら-

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私は、観念したように肩をすくめ、本の続きをめくった。 ほんの少しだけ、ドキドキしていた。楓にしてみれば、ただ生徒を補導しただけなんだろうけど。 同じ本を好きと言われたからかもしれないな。そう、思った。 そして、少しだけ意外に思った。楓が好きだと言ったこの作家は、本当に静かで淡々としていて、地味な印象で。でも、心の琴線に触れるんだ。わたしの、酷く孤独な部分に触れる。そんな話だ。 楓が私と孤独は結びつかないと感じたように、私には楓と孤独が結びつかない様に思えた。 でもね、楓も私と同じように孤独を抱えているのだとしたら。そう考えたら、少しだけ悲しくなった。 楓に悲しい顔は似合わない。 似合うなんて、思いたくないのかな…。
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