Case,05 Blade of words-言葉の刃-

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 玄関先。  部屋に上がり込みながら浩巳は背後から着いて来る大地に声をかける。 「いつから待ってたの? 連絡くれればよかったのに」  背を向けて上着を脱いでいる浩巳を見据えると、大地は重たい口を開いた。 「……お前さ、何処行ってた?」 「えっ? あぁ……ちょっと会社の人と飯」 「女だろ?」 「?!」 驚いたように肩越しに振り返った浩巳に心の中で舌打ちする。 だが、冷静を装い言葉を続けた。 「会社戻って聞いた。村井と仲良さげに出て行ったって」  トゲがある大地の物言いに、浩巳は眉間に皺を寄せると再び背を向ける。 「別に飯くらいいいだろ? お前遅くなりそうだったし……腹、減ってたから……」 「本当にそれだけか?」 「…………」 大地の言葉に、ネクタイを解きかけた手が止まる。  微かな反応を示した浩巳に、大地は眉を潜めると再び問いかけた。 「なんか……言われたんじゃないの?」  まるで自分の行いを責めるような大地の言葉に腹が立った。 なぜ、大地に責められなければいけないのか。 自分は疾しい事は何一つしていない。 大地と付き合っている訳ではないのだから。  浩巳は再び手を動かし始めると何食わぬ顔で口を開く。 「付き合ってくれってさ。急で驚いたよ」 「?!」  背を向けたまま話し続ける浩巳に、大地の表情が次第に険しくなっていく。 「まだ返事してないけど、どうしようかなって」 「お前……それ本気で言ってんのか?」 「なんで? 俺たち、別にそうゆう関係じゃないだろ?」 「……っ……?!」 笑いながらそう言った浩巳に、怒りを覚えた。
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