序章

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   城は、常に変化する。  まるで、それ自体が生物のように成長。一月もあれば、様子が変わってしまう階もあるくらいである。  変わらないのは、天守閣と外観くらいなもの。  故に地下の最下層が、カラス天狗の知る状態のままであるとは限らない。  やがて、最下層に辿り着く。 「ここは……」  そこは、確かに地下の最下層だった。  階段を降りて、土壁によって三つに仕切られた空間が目に入る。  右の空間は、九十九神が産み出されている。  左の空間は、小妖が産み出されている。  そして、中央の空間には闇が渦巻いていた。 『そう、そこだ』  突然、辺りに大妖の声が響き渡り中央の空間に進むよう、カラス天狗に指示が出される。  カラス天狗は、それに従った。  渦巻いていた闇が、その体を包み込むと同時に体だけじゃなく、精神までも蝕んでいく。  存在が消える。  カラス天狗は、薄れ行く意識の中でそう思った。  だが、渦巻く闇は消滅する事を許さず、羽毛の先にまで激しい痛みを与えてくる。
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