【シーン3】

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 この辺りで祭が開催されていると、ウェイトレスから聞いた。  祭は毎年この時期に開催され、大賑わいになるとのことだった。  興味をもったエリザベスとフランクは早速会場へ向かった。  辺りは日が落ち始めており、通りの家々の軒下には若干暗がりができていた。  大勢の人が輪を作っていた。  その真ん中には空間ができており、薪がくべられ、今にもキャンプファイヤーが開始されようといった雰囲気だった。  通常のキャンプファイヤーと異なる点としては、くべられた薪の上に板があり、さらにその上に女性が立っていることだ。  女性の背後には地面から垂直に太い木の幹がたてられており、女性の腕が頭の上で縛られていた。  縛られた腕は背後の木に縛り付けられており、身動きできない状況に見えた。  女性の周囲には男性が2人おり、各々の手には松明が掲げられていた。  これから始まる宴の内容が嫌でも想像できた。  しかし、信じられなかった。  彼らは女性の足元に火を放った。  そして、低い声で何かを呟きながら、火の周囲を回っていた。  板の上の女性の顔がひきつり、頬を涙が伝い、声にならない声が叫びとなって辺りに響いた。  周りの観客は興奮しているようで、高い声で叫んでいた。  誰も嫌な顔せずハイテンションで参加しているその光景を見て、フランクは一瞬これがイリュージョンか何かではないかと考えたが、板の上で泣き叫ぶ女性の表情は事実そのものだった。  まやかしではなかった。  徐々に足元の板に火が移り、人肉の焦げる強烈なにおいが辺りを取り巻いた。  観客たちは臭いが充満するに従い、さらにテンションを高めていった。  「狂ってる・・・警察に連絡しなきゃ」  フランクはエリザベスの手を取り、観客の群れを通り抜けた。  しかし、路地への入り口にはガタイの良い大男たちが立っており、通り抜けられそうになかった。  仕組まれたのか、あるいは偶然路地から出てきたところで観客に混じったのかはわからなかったが、刺激するのは危険に思えた。  仕方なく、2人はその場にとどまり、公開処刑とも見える奇妙な祭りを見届けることになった。  火に囲まれた女性の顔はなおも苦痛にゆがんでいた。  炎の裾が女性の膝の高さまで届いた時、突如観客の中から奇抜な格好の人間が飛び出してきた。
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