64人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
手が冷たく濡れている・・・。
エリザベスは自分の手に冷たい液体がついていることを感じ取った。
耳を澄ますと、ポタッポタッとしずくのたれる音も聞こえる。
「ここは・・・どこ・・・?」
立ち上がろうとしたが、少しグラついた。
眩暈だろうか。
中腰のような恰好で体制を整えた。
ふと、フランクの姿がないことに気づいた。
すぐにケータイを取り出し、電話をかけてみる。
しかし、つながらない。
ケータイの画面を見ると、左上端に『圏外』と表示されていた。
「フランク? どこ?」
真っ暗な空間で灯りなど全くないが、手の感触などから、ここが屋内ではないことがわかった。
空気の雰囲気や苔の臭い、少し寒いこの温度感からいって、洞窟だろうか。
見知らぬ空間で恐怖を感じてはいるが、フランクと落ち合わなければ好転しないことをエリザベスは理解していた。
「行かなきゃ」
エリザベスは歩き始めた。
まずは数歩前へ歩いてみた。
前方を両手で探りながら、すり足で。
しかし、すぐに歩みを止めることとなった。
「これ・・・なに・・・?」
前方を探っていた右手の人差し指の先に、チクッとした痛みを感じたのだ。
エリザベスは反射的に右手をひっこめた。
指先がジンジンしている。
血が出ているのだろうか。
指先を唇に当ててみた。唇が湿った。
やはり、出血している。
先ほどの痛みは、ナイフか何かだろう。
岩なんかではない。
あの感じは刃物だ。
恐る恐る、左手でも同じ高さのところを探ってみる。
やはり、とがったものがこちらを向いているようだ。
「洞窟じゃないの・・・?」
空気は明らかに洞窟だが、肩と同じ高さにナイフなどあるわけがない。
しかも、切っ先がこちらを向いている。
明らかに、トラップだ。この空間にいる人質を逃がさないための仕掛けだ。
「誰がこんなことを・・・」
エリザベスは恐る恐る切っ先のあった高さよりも下方を探ってみた。
何もなく、自分の体なら通れそうだ。先を急ごう。
「フランク・・・待ってて・・・」
エリザベスは四つん這いになり、ゆっくりその空間を出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!