64人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
フランクもエリザベスを探して暗闇の中を歩いていた。
幸いにして、尻ポケットのジッポライターがあったため、ここまで灯りには不自由しなかった。
しかし、ライター本体の重量が明らかに軽いと感じられるため、そう長くはもたないだろう。
「エリー、どこだ?」
声が反響した。
辺り一面岩肌がむき出しとなっており、ところどころに石清水が見える。
彼を包み込み空気は若干肌寒く、そして不穏な雰囲気を醸し出していた。
何か良からぬことが起きていることを表現していると、フランクは感じた。
「エリー、今助けに行く」
フランクは左手を黒光りする壁にあて、左回りを基本として行動していた。
警察官のフランクは市街地戦のスペシャリストとしても有名だった。
特に、クリアリングの精度はチームでトップだった。
市警の署長賞をもらったこともあった。
5本目の分かれ道を左に曲がった瞬間、突然目の前に空気を切る気配を感じた。
フランクはすぐさま右足を引き、目の前の気配に対して体を垂直にした。
細長いものが胸のあたりをかすめていった。
凶器と思われるものをよけた瞬間、凶器の基点に対して左ジャブを放った。
こぶしに伝わった反動はそれほど重いものではなかったが、対象が砕け散ったのはわかった。
地面に崩れ落ちた対象をライターの灯りで照らして確認した。
「ずいぶん悪趣味な仮面だな。だが、1つ謎が解けて良かった。あのキャンプファイヤーは何らかの儀式ってことだな」
地面に横たわっていたのは、仮面をつけた若い男だった。
上半身は裸で、赤と黄色と白の3種類のラインで塗装された気味の悪い仮面をつけていた。
手に持っているのはフランクに振りかざしてきた凶器のメイスだろう。
先進国の警官の装備に例えれば、警棒である。
しかし、メイスはもともと僧兵が持つ懲罰用および拷問用の鈍器である。
いくらハイチが発展途上とはいっても、時代錯誤にもほどがある。
フランクは仮面とメイスを奪い、再びエリザベス探索へ戻った。
最初のコメントを投稿しよう!