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彼女は金切声をあげた。
あまりに突然のことで、一瞬何が起こったのかわからなかった。
金切声をあげた彼女は、そのまま足から崩れ落ちた。
まるで、全生命力を声に乗せて解き放ったかのような強い衝撃波すら感じられそうだった。
「エリー、大丈夫かい?」
普段フランク・リード巡査として勤務し、時には発狂じみた人間も相手にするが、ここまで酷い金切声は聞いたことがなかった。
俺は今、恋人のエリザベス・クラークと一緒に自宅にいる。
その辺の恋人達と同じように、普通のウィークエンドをこのエリザベスとともに過ごすはずだった。
だが、緊急事態が起きた。
生まれて初めての経験だ。
ここまで大きな金切声を聞いたのは・・・。
俺は再びエリザベス(愛称『エリー』)を呼ぶ。
「エリー、ごめんよ、悪かった。今日はサプライズは用意してないんだ。でも、そんなことで怒るような君じゃないだろ?」
そう、今日は自宅デートということもあり、2人でのんびり過ごすと決めていたのだ。
豪邸とは言えないがそこそこ広い2階建ての一軒家。
その1階にある50平米のゆとりあるリビング。
このリビングでディナー後の映画鑑賞をしている最中だった。
ストーリーは最高に盛り上がり、いよいよクライマックスというところだった。
しかし、彼女は何を気に召さなかったのか、突然叫んだのだ。
少し前まで、こんな風ではなかったのに・・・
「エリー、落ち着いてくれ。いいかい、俺の声を聞くんだ。ああ、ただ聞くだけで良い。静かに・・・そう、静かに・・・」
彼女は一瞬俺と目を合わせた。しかし、次の瞬間・・・
「お前はなぜこの娘とともにいる」
低く太い声が聞こえた。
その言葉と共に、衝撃波が俺を襲い、体ごと50cmほど後方へ吹き飛ばされた。
着地する瞬間、背中を強く打ち付け、「うっ」とうめき声が出た。
しかし、幸いにも、後ろに壁や階段がなかったため、大怪我を免れた。
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