【シーン2】

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 「昨夜、何?」  彼女は俺の言葉に反応した。  俺は生唾を飲み込んだ。  手のひらが汗でびっしょりになっている。  そして、額に汗が滲んで、こめかみを汗のしずくが垂れていった。  「い・・・いや・・・何でもない。独り言だ。気にしないで」  俺は逃げた。  身の安全を確保してからでないと、危険だ。  あっちの世界に踏み込むのは、もう少し安全になってからでも遅くはないはずだ。  早まってはいけない。  「そう、それなら良いけど。朝食は準備してあるから、先にテーブルについて食べちゃってくれる?」  彼女は振り返ることなく、朝食を摂ることを促した。  「う・・・うん、いただくよ」  俺はそういって、テーブルへ向かった。  しかし、何か心に引っかかるものがあった。  彼女は今、なんと言っただろうか。  『朝食は準備してあるから』と言った気がする。  それはいったいどういうことだろうか。  今彼女はキッチンで作っているのは朝食ではないのか。  だとしたら、昼食の準備をしているのだろうか。  「エリーも一緒に食べようよ」  先ほどの言葉から、彼女もまだ朝食を摂っていないはずだ。  「うん。でも、ちょっと時間がかかるから、先に食べ始めて良いわよ」  再び彼女は振り返ることなく作業を続けている。  しかし、よりのよってなぜこういう家具の配置にしたのだろうか、と俺は過去の自分を責めた。  このダイニングテーブルの配置は、キッチンからの導線を考えると、死角になる。  つまり、仮に彼女が悪魔的な何某を準備しており、キッチンから食事中の俺のところへ来るときには、俺は背中をみせていることになる。  それは、奇襲を受けることを意味しており、俺は抵抗する間もなくヤラレル。  せめて心の準備くらいはしたいものだが、それすら許されない。  「どうしたの? どこか痛いの?」  突然背後から彼女の声が聞こえた。  あれこれ考えをめぐらしている間に、彼女の作業が終わっていたようだ。  「い・・・いや・・・ちょっと考え事してて・・・」  2人はテーブルにつき、食事を始めた。  「そういえば・・・」  彼女はおもむろに口を開いた。  「フランク、昨夜床で寝ていたわよ。ベッドまで運ぶの、大変だったんだから」
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