73人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
ねずみと出会ったのは、しとしとと雨の降る夕方のことだった。
その日の私は、ひどく落ち込んでいて、一人きりで家を飛び出してしまった。
泣きながら、歩き続けて…
当時の私にはとてつもない大冒険のように感じていた。
降り止まない雨を避けるように、河原の橋げたに逃げ込んだ。
ニャ…
何気なく辺りを見回した。
声の主を探して、草っぱらの中を入っていく、
ニャーニャー…
先ほどよりも声は大きくなり、近づいているのが、分かる。
「可哀想に…お前も捨てられたの…?」
私は、ダンボール箱から、そっと子猫を取り出し、抱きかかえた。
ダンボール箱に押し込められ、こんなところに捨てられていた
子猫が、まるで自分のことのように思えた。
子猫を抱きかかえて、座り込み
どのくらいの時間がたっただろう。
私は、もう帰る家を無くしてしまった悲しみを、子猫のぬくもりで埋めようとしていた。
「…あら?あらっ??
三咲ちゃんじゃないの!?
どうしたの、こんなところで…」
それは、隣の家に住むおばあちゃんだった。
おばあちゃんは、私の顔を見て
察しがついたかのように…
「おばあちゃんのうちに来るかい?」
手を差し伸べてくれた。
私はこの優しくて、可愛らしいおばあちゃんが大好きだった。
最初のコメントを投稿しよう!