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私の背のビジョンから、テンポの良い音楽と、可愛らしい女の子の歌声が聴こえてきた。
すぐに誰の歌だか分かる。
私を切り捨てた彼女の新しいお人形ーーー。
振り返らず見るつもりも無かったけれど、周りの有りとあらゆるビジョンや看板は、その翡翠色の髪の彼女の歌っている映像を流していて、どうしても目に飛び込んでくる。
その映像が私を責めているようで…たまらず私は走り出した。
「…カンナ」
走りながら、うわ言のように彼の名を口にした。
自分の命があと僅かだと知って、真っ先に浮かんだのが彼だった。
不器用で失礼なヤツで、つい憎まれ口を叩いてしまう。
でもとても優しくて、正義感溢れていて、真っ直ぐな人。
いつの間にこんなに彼のことが好きになっていたのだろう…。
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