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彼に会いたかった。
何も残っていない自分を、彼はどう思うだろうか。
いつものような優しい笑顔をくれるだろうか。
「カンナ、カンナ」
ただ、愛しい彼の名を呼びながら、私は走り続ける。
水溜まりの水を跳ね上げながら走っていたら、段差に躓いて派手に転んでしまった。
上体だけをノロノロと起こし、膝をついたままの私の目に映ったのは、水溜まりに反射して映る、自分のアルバムのジャケットだった。
人々の関心の移ろいは早く、彼らの関心はもう既に新しい新星アイドルに向けられていて、銀河のユニバーサルボードを賑わせた私のアルバムにはプライスダウンの文字が見える。
水溜まりに映る私のジャケットは、降りしきる雨の波紋と歩く人達によって歪んで見えて、まるで私まで歪んでいるような錯覚に陥る。
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